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ネタバレ映画評 パブリック・エネミーズ
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年末に映画を見に行って、評を書こうと思って忘れていました。

SPOILER WARNING *** ネタバレ注意 *** SPOILER WARNING
ストーリーの内容が書かれています。
SPOILER WARNING *** ネタバレ注意 *** SPOILER WARNING

冒頭は脱獄のシーンである。舞台は大恐慌時代のアメリカ中西部。刑務所内で暴動を起こして脱獄を計る銀行強盗犯たち、それを外から手引きする首領。彼こそ、銀行強盗と脱獄を繰り返し、創設間もないFBIから「パブリック・エネミー(社会の敵)NO.1」として指名手配された男ジョン・デリンジャーである。演ずるのはもちろん、我らが(?)ジョニデだ。

脱獄時に不用意に発砲した仲間のせいで、別の仲間が命を落とす。デリンジャーがその男に銃を突きつけると、他の男たちは「そんなヤツは殺していいぜ」とけしかける。しかしデリンジャーは男を走る車から突き落とすだけで命は奪わない。冷酷になりきれない男デリンジャー。「汚れた金しか盗まない」この男は、銀行強盗に居合わせてしまった不幸な市民に金を返してやる。犯罪者でありながら、人気者なのだ。市民は彼に声援を送る。

冷酷無比な犯罪を繰り返しながらも、心の中に優しさを抱えた男の葛藤を描いたピカレスク映画・・・なのかと思いきや、話はちっともそちらにに向かってくれないのである。

さて、対抗馬の男はFBIの捜査官である。逃げる凶悪犯をライフルで撃ち殺した功績で抜擢され(いいのかそんなんでFBI)、デリンジャー追跡の責任者に据えられる。狡猾なデリンジャー一味の手によって、次々に命を落としていく部下たち。しかし、彼はデリンジャー逮捕のためにはどんな犠牲もいとわず、悪辣な罠さえ仕掛ける。

ジョニデを主演に据えながらも、実は正義の名の下に暴走した捜査官パーヴィスの心の闇を描いた映画だったのか・・・と思いきや、やっぱり話はそっち方面にも深まらないのである。

美しい女が登場する。ホテルのクローク係をしている貧しい女ビリーだ。女は会ったばかりのデリンジャーに言う、「私、あなたのことをよく知らないわ」。するとジョニデはこう答えるのだ。「好きなものは野球、映画、速い車、そして君だ。他に知りたいことは? 来いよ。俺とドライブしよう」。じょにで以外のヤツがこんなことをホザいたら、日本刀でまっぷたつにしても構わないと思う。

これは、どんなに状況が困難でも惚れた女は最後まで守り通す、そんな一本気な男と、女の情愛を描いた映画だったのか・・・なるほど、そうだったのか、やっとわかったぜ・・・と思いきや、話はあっさりその線から外れていくのである。

・・・いったいこの監督はどんな映画が作りたいんだよ! と叫びそうになるのを抑えていると、やがて激しい銃撃戦のシーンが連続する。バゴンバゴンと音がうるさいせいで、こちらはもう睡眠に逃げ込むことも叶わない。銀行強盗一味もFBIも、ともかく銃を撃ちまくる。きっと背中にたくさん弾帯を巻いているか、後ろに補給線が伸びているのであろう。

まあともかく、じょにではカッコ良いし、女はきれいである。ビリー役の女性は覚えておこう。やっぱ足の細い女はいいよね。さて、格好良く勝ち続けていたデリンジャーではあったが、いつの間にか運に見放されていくのである(女がサゲマンだったのか?)。仲間の裏切りに会い、後方支援を受けられず、無茶で勝ち目の薄い強盗計画にばかり乗る羽目になる。人間貧すれば鈍するというか、じりじり落ち目の主人公の焦りをジョニデが違和感なく演じている。ここら辺がこの映画の唯一の見所かも知れない。

しかし、ここからの展開が妙に遅い。だからって緊張感のあるシーンが続いているわけでもなし。実際見ていてあまり疲れない。手に汗を握らないのである。

スポイラー警告を無視して読んできたあなたも、この映画を見るつもりがあるなら、さすがにこの先は読まない方がいいかもしれない。



SPOILER WARNING *** ネタバレ注意 *** SPOILER WARNING
ストーリーの内容が書かれています。
SPOILER WARNING *** ネタバレ注意 *** SPOILER WARNING

デリンジャーはFBIの罠に落ちて銃殺されてしまうわけだが、いまわの際に何かをつぶやく。老捜査官がそれに耳を寄せるが、なにも聞こえてこない。パーヴィスが老捜査官に「ヤツは何を言ったんだ」と聞いても、「何も言っていなかった」とつれないのである。

最後のシーン。その老捜査官がビリーを訪ねる。彼女はデリンジャーをかばった罪で服役中である。老捜査官は彼女にデリンジャーの最後の言葉を伝える。そう、実は彼は最後にメッセージを残していたのだ。このダレた映画の最後に、せめて救われる感動のシーンがあるのではないか・・・きっとそうだよね。しかしその期待はあっさり裏切られる。なんでそんなことをパーヴィスにわざわざ伏せなけりゃならんのだ?

エンドロールの前、捜査官パーヴィスが後に自殺したというキャプションが入る。デリンジャー逮捕のためにあまりに多くを犠牲にしすぎた彼は、良心の呵責に耐えきれなかったのか・・おお、なるほど、と思ったら、パーヴィスが死んだのは老年に達してからである。関係あるのかよ、この話と。どこまでも人をバカにした映画であった。

監督としてはあれもやりたい、これもやりたい。総花的にいろいろ用意してみました。あとはスピード感あふれる展開と、ギャング映画ばりの銃撃シーンで全体を引き締めてみます・・・て感じなんだろうけど。どの部分もそうなってないのである。

まあ、何はともあれジョニデは格好良い。女はきれいだ。インディアンとの混血というコンプレックスを抱え、過去を隠して生きる女に、ジョニデがこう言葉を投げかける場面がこの映画の秀眉であろうか。

 「人は来た道ばかりを気にするが、どこへ向かうかが大切だ」

確かにその通りだ。だが、そう言ったデリンジャーは破滅の道を歩む。じり貧にあえぎながら女と海外に逃亡する夢を追い続け、銃殺されて歩道に転がる。そのアイロニーこそこの映画の本質やもしれない。
by kokoro-no-iede | 2010-01-24 21:51 | ネタバレ Films
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