Sports Graphic Number 1085八冠達成完全保存版 藤井聡太と将棋の未来。
藤井聡太が2016年末にデビューしたことは、当時はまったく知りませんでした。その直後からの29連勝は、多少はニュースで知っていましたが、注目していませんでした。しかし、妻はずいぶん話題にしていたような気がします。2019年末に藤井七段(当時)が王将挑戦を逃したのもリアルタイムでは知りませんでした。
それがなぜこんなに将棋を観るようになったのか。翌2020年の棋聖挑戦のときにAbemaTVで中継があるのを観られないかと妻から聞かれたのがきっかけだったはずです。PCでなくても、AmazonのFireTVにAbemaのアプリをインストールすればテレビで観られますよと答えました。
妻に付き合ってそれを観ているうちになんだか面白くなってきて、Abemaの有料契約をし、CATVで囲碁将棋チャンネルがあるのをみつけ、翌年にはPCにDL系の将棋ソフトをインストールしていました。「あなたがこんなにハマるとはねぇ」と妻に言われました。
僕ら夫婦は今や50人以上の棋士・女流棋士の顔と名前を覚えています。そんなことは、プロ野球選手でもサッカー選手でもなかったことでした。
個人競技であるので棋士たちはライバル関係にあります。それと同時に、アマチュアの将棋指しや観る将のファンあってのプロ競技なので、普及活動は欠かせずその点では彼らは同僚の関係でもあります。次世代のプレーヤーも育てなければならず、そのために師弟制度などというものもあり、まるで競馬馬のように系統がつながっています。テレビ中継や大会でもプロのアナウンサーなどを極力使わずに自分たちを出演させているところはなんだか大学のサークルのようなノリがあります。将棋連盟は伝統ある将棋文化の普及団体であると同時に競技団体でもあり、スポンサーから提供された資金を分け合う利益分配システムでもあります。こうした多面性や複雑さが、棋士たちの個性と相まって、私たちを惹きつけるのです。
https://www.fujisan.co.jp/product/3146/new/