脳はいかにして<神>を見るか 宗教体験のブレイン・サイエンス
アンドリュー・ニューバーグ/著、茂木健一郎/監訳、木村俊雄/訳
脳神経学者である著者のニューバーグとダギリは、宗教体験を科学的に解明する「信仰の生物学」の研究の結果、「いわゆる神秘体験は幻覚ではなく、脳神経学的に測定可能な現象であり、宗教的体験は、ヒトの脳だけに組み込まれた先天的機能である」という仮説を立てた。
本書はこの仮説に基づき、ヒトの脳の基本メカニズムを解説した後、神話、儀式、神秘体験、宗教、絶対者などが、脳が自己と他者の区別を認識しなくなる「絶対的合一状態」に由来するものだという証拠を示していく。その鍵になるのが、身体の空間的な位置把握を司る脳の「方向定位連合野」だ。瞑想における極度の集中、あるいは「無」の状態がこの領域への感覚入力を遮断し、特別なモードに入ることが宗教体験を引き起こすというのだ。多くの事例を交えながら、平易な言葉で知的興味を喚起するポピュラー・サイエンスである。
――解説より