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ネタバレ映画評 インビクタス/負けざる者たち
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ストーリーの内容が書かれています。
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 アメリカ人の作ったラグビーの映画? 却下するに十分な理由である。メリケンにラグビーが分かるとは到底思えない。それでもこの映画を見ようと思ったのは、イーストウッド監督の『チェンジリング』が良かったから、次も期待したわけだ。そしてラグビーというより、ネルソン・マンデラを描いた映画だと聞いたからである。

 長く人種隔離政策を続けた南アフリカは、欧米諸国の経済制裁によって疲弊し、1991年、時の大統領デクラークが政策の撤廃を宣言する。3年後全国民が参加した総選挙で新大統領に選ばれたのは、解放運動の闘士ネルソン・マンデラであった。反逆者として27年間獄中にあった彼の大統領就任初日からストーリーが始まる。

 長らく圧政を敷いた白人に対する報復を叫ぶ多くの者にマンデラは語りかける。軍隊・警察・経済は依然として白人達が握っている、彼らとの融和なしに新しい国の発展はない。寛容の心こそが必要なのだと。とはいえ問題は山積だ。「この国は自信を必要としている」そうマンデラはつぶやく。

 折しも1995年のラグビーワールドカップの開催が近づいていた。欧米諸国による制裁のひとつとして長らくワールドカップから排除されてきた南アフリカ代表にとって、初の参加。しかも自国開催である。
 しかし対外試合の少なかった代表チームは士気も実力も落ちており、下馬評ではせいぜいベスト4まで残れればいいほう、いや下手をすると予選プール敗退かも知れない。おまけに黒人ばかりになったスポーツ協会は、アパルトヘイト政策の象徴である代表チーム「スプリングボクス」を解体しようとさえする。なにせラグビーは白人富裕層のスポーツ、貧しい黒人達にとって大事なスポーツはサッカーなのだ。しかしマンデラはそれを制し、黒人が白人のチームを応援する融和こそ国の発展と説く。

 マンデラはチームの主将をお茶に招く。マンデラは決して優勝という一言を口にしない。ただ国のリーダーとして、チームのリーダーである主将に語りかけるのみである。「どうやったら皆に持てる実力以上の力を発揮して貰えるだろうか」 主将はラグビーのチームが国の将来を握っていることを知るのである。



SPOILER WARNING *** ネタバレ注意 *** SPOILER WARNING
ストーリーの内容が書かれています。
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 とはいえ、ここで鬼コーチが現れてたるんだチームを立て直していく、という展開には決してならない(もしそうならイーストウッドの映画を二度と見ないだろう)。主将の、そしてマンデラの願いは空回りするかのように思える。しかし、事態はじりじりゆっくりと変わっていくのである。

 ラグビーファンなら1995年のワールドカップ優勝国がどこかは誰でも知っている。決勝戦の組み合わせも結果も知れている。スポーツの録画番組は退屈だ。結果が分からないからこそスポーツは面白いのだ。だから「この映画も後半は退屈するだろう」と思ったのだが、その予想はあっさり覆される。ニュージーランド代表オールブラックスのハカの迫力や、ロムーの巨躯に圧倒される。いまだかつてオールブラックスに勝ち越した代表チームはなく、100年以上一回も勝ててない国すらある(日本代表はこの大会で145対17という新記録で敗れた)。果たしてスプリングボクスはこの強豪に勝つことができるのか、いつの間にか手に汗を握っているのである。

 主演はアカデミー賞俳優モーガン・フリーマン。彼がマンデラ本人から自伝の映画化権を買い取り、脚本をイーストウッドに送ってできた映画だそうである。今年は南アフリカでサッカーのワールドカップがある。
by kokoro-no-iede | 2010-03-09 11:24 | ネタバレ Films
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